ポートランドの映画館”The Hollywood Theatre”で毎年3月に行われている特集上映”Feminist March”
今年で4年目となる本映画祭のキュレーター、アリソン・ハレットがMERCURY誌*1のインタビューを受けた。

―どのように本映画祭は始まったのでしょうか?
Feminist Marchは以前の映画館スタッフにより2016年に始まり、プログラムはアート映画や、学術的な作品に絞られていました。もともと私はフェミニズムが押し出されたプログラミングブロックに惹きつけられていたので、昨年2017年はコミュニティパートナーやゲストキュレーター達との目的を強く打ち出したシリーズとしてやり直しました。

パートナーシップには、Brown Girl Rise, PICA, and the POW Film Festといった地元団体があり、
「キューティ・ブロンド」「イヴの総て」「ナチュラルウーマン」他多数の作品が上映された。

―なぜ「ステップフォードの妻たち」のようなホラー映画がラインナップされているのですか?
ステップフォードで起こっていることを探るジョアンナとボビーの関係性はとても興味深いです。彼女たちはうるさいし、よく笑いますが悪気はありません。二人はある家族の家に忍び込み、夫婦の情事を除きながらクスクス笑っているんです。二人の関係性はとてもリアルで誠実で、映画の男達からは完全に独立しています。彼らの夫たちが二人の友情を壊すのは、本当に見るに耐えませんでした。

Metooから#Time’sUpに至る近年のフェミニズム運動では、女性同士の親交を深める重要性が見直されています。

例えば大ヒット中の『キャプテン・マーベル』では、
主人公のキャロル・デンバーと黒人女性のマリア・ランブとの友情も物語の一つです。
その関係性にどんなテーマがあるのか、主演のブリー・ラーソンはEntertainment誌*2に以下のように語りました。

今年は2019年だから、インターセクショナル・フェミニズムの年です。
つまり質問の余地もなく、世の中には多様な”女性”がいること、”女性”とは一言では語れないということです。
たとえそれがラブストーリーであっても、素晴らしい機会になりました。
大きな愛を、失われた愛を。そうした愛を見つけ出したときに、キャロルは親友と一緒でした。
そうした物語は驚異的に力強く、私を惹きつけます。
つまり親友と一緒であれば、世界の果てまで行けるし、最後まで戦えるということです。
それは完璧で、私にとってはとても意味のあることです。
そうした部分「女性の強さ」がこの映画の一部であると思います。

インターセクショナリティ*3とは、黒人女性運動家のKimberlé Crenshawによって1989年に定義されました。
彼女は白人中流階級の女性の間で起こったフェミニズムでは見過ごされてきた、
人種、階級や性指向を超えたフェミニズムを提唱しました。

―今年の映画祭で一番の見どころはなんですか?
キャサリン・コリンズ”Losing Ground”を鑑賞するのがとても楽しみです。この作品は黒人女性によって書かれ、撮影されたはじめての作品のうちの一つとされています。1982年に完成して、2015年まで劇場公開されませんでした。見過ごされた傑作とされているにもかかわらず、今でもめったに見ることは出来ません。POW映画祭との共同上映会として、監督の娘で作家のニーナ・コリンズを迎えることを楽しみにしています。

“Losing Ground”とは、キャサリン・コリンズによってニューヨークで撮影された。
大学で哲学を教える教授サラと夫の画家ヴィクトールの関係を描いた物語だ。
ポルトガル”Figueroa International Film Festival”で受賞をしたものの、当時作品が日の目を見ることはなかった。
以下はPBS News Hour*4がニーナ・コリンズに母のキャサリンについてインタビューをしたコメントの邦訳。

母がいつも部屋で創作をしていたのを覚えています。鬱を患っていたことや、癌を3度再発したことは、死後に日記から見つけました。ヨーロッパ留学から帰国した2週間後、1988年に母は死去しました。多くの映画脚本、戯曲、未完成の小説などが残されています。

1980年代にかけてアメリカの失業率は10%に上昇、ベトナム戦争集結から続く景気低迷から経済不況に陥りました。”Losing Ground”が完成し、映画産業にインディペンデントな作品を上映する力があったかは疑問があります。

しかし2019年になり、小さな町ポートランドで歴史的にも貴重な作品が上映されていることは素晴らしいことです。
IndieTokyoではこうしたインディペンデントな活動を応援する意味も込めて、規模は小さくても意義のあるニュースは積極的に取り上げたいと、今回の記事を掲載しました。少しでも多くの方に本映画祭の活動が拡がれば幸いです。

*1 『Portland MERCURY』”The Explicit Feminism of the Hollywood Theatre’s Feminist March Series”
https://www.portlandmercury.com/film/2019/02/28/26039089/the-explicit-feminism-of-the-hollywood-theatres-feminist-march-series

*2 『Entertainment』”Brie Larson, Samuel L. Jackson blast to the past with EW’s Captain Marvel issue”
https://ew.com/movies/2019/02/28/captain-marvel-issue-brie-larson-samuel-l-jackson-90s/

*3『Wikipedia』”Intersectionality”
https://en.wikipedia.org/wiki/Intersectionality

*4 『PBS NewsHour』”A groundbreaking filmmaker finally gets her time to shine”
https://youtu.be/cV8uf8aqxNA

伊藤ゆうと
イベ ント部門担当。平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)”藤沢
オデヲン座”で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の
勉強中。


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