あんまり知らない?ドイツエンタメ映画の世界に迫る

    70年代ドイツ映画というと、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?
    ヴェンダース、ヘルツォーク、ファスビンダー?
    彼らに加えシュレンドルフやシュレーター、シュミッドなどニュー・ジャーマン・シネマの監督たちの国外での成功の裏に隠れた、70年代ドイツエンタメ映画を紹介する研究会を12月11日金曜日、17時(上映は18時)から上智大学で開催いたします。

    🌟本年度の上智大学ヨーロッパ研究所主催、ドイツ映画ゼミナールでは、ローランド・クリック監督の『デッドロック』を上映いたします!

    4.1.1

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    銀行強盗のあと、メキシコのシエラにある「デッドロック」という廃村に逃げ延びたならず者のキッド。廃村の唯一の住民であるチャールズと彼はならず者たちから盗品を奪い返すことを企てます。マリオ・アドルフ演じる気の毒になるくらいうすのろでついてないチャールズ、アンソニー・ダーソン演じる熟練の殺し屋、マーキュアード・ボーム演じる傷ついたギャングの3人が巻き起こす闘争を、クリックのアバンギャルドな映像とCANの音楽がサイケデリックに描き出します。
     音楽やショットがかっこいいだけでなく、『爆撃機パイロット』や『あやつり糸の世界』でも活躍した、マーシャ演じるヒロイン、ジェシーの不思議なキュートさも見所です。個人的にはドイツ映画界ではあんまり見ることのできないロリータな魅力にあふれた女優(モデル)さんで大好きです。映画は男っぽい題材だけど、女の子にも楽しんでもらえると思います。(なんてったって女の子たちに支えられてできた企画なのですから!)

    Deadlock02

     ドイツ版『エル・トポ』、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』とも言えるこの映画、なんと日本初公開なんです!今回の上映に際して、はじめて日本語字幕もつけます。
    入場無料、クリックについてまとめた小冊子までついちゃいます。(実は先着30名さまには激レアなおまけあり!権利元に感謝です🙏)

    Deadlock01

     さて、ドイツ映画賞を何度も受賞しながら、アメリカを除く国外での栄光はほぼなかったローランド・クリック。彼は一体どのような人物だったのでしょうか?1939年7月4日、ホーフ生で生まれた彼は、映画作家として成功する以前、ジャズミュージシャン、画家として知られていました。ドイツ文学と演劇学を4年間専攻し、ドイツ映画テレビインスティトゥートでも学びました。この時期にロルフ・シュンツェルの『ミュンヘン ある学生の日記』というドキュメンタリー調劇映画の脚本とカメラを務め、1962年からカメラマンとしての職を得、翌年から自身も映画を撮り始めました。デッドロックは1970年にイスラエル軍の全面協力を得撮影され、商業的にも、批評的にも大成功をおさめました。カンヌ国際映画祭でも大きく評価され、マカロニ・ウエスタン、ハリウッドの西部劇、スピルバーグからの影響を指摘されました。 1973年から4年にかけ、彼は『スーパーマッケット』を制作しました。この、型にはまった大都市における希望のない生存競争物語で、またもドイツ映画賞にノミネートされました。
     クリックはつねに映画で大衆を煽動しようとしていました。1979年、彼はドキュメンタリー映画『デルビー・フィーヴァー USA』で3度目のドイツ映画賞に選ばれました。その後彼はベルリンの音楽シーン自体を主人公とした『ホワイト・スター』に着手し、ハリウッドスターのデニス・ホッパーと協力した結果、4度目のドイツ映画賞を受賞しました。 その後クリックはもう1本映画を撮って映画業界から退き、東南アジア、南アメリカの旅のなか、西海岸に定住し、小説や映画定理の本を書いて過ごしています。また、多くのドイツの映画学校でも教鞭をとっています。
     彼の作った映画は娯楽映画として西ドイツ中で人気になり、アメリカのニューシネマの香りと古典的な物語手法の両方の魅力を併せ持つ作風で、シュリンゲンズィーフなどのちの世代の作家たちにも影響を与えました。

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     上映前には講義も行います。講師には早稲田大学文学部助教で、ジーバーベルクなどの研究をされているドイツ文学界きってのシティボーイこと荒井泰氏をお迎えします。(アーバンな経歴…)
    「映画ゼミナール」と名前こそ硬いですが、気軽に楽しんでいただける会になると思いますので、ぜひぜひいらしてくださいね!
    作品上映後にはなんと❗️ヒミツのおたのしみプログラムも用意しています🐰🌟

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    詳細
    ・日時:2015年12月11日 17時〜20時
    ・場所:上智大学四谷キャンパス 図書館821教室
    ・言語:ドイツ語、日本語(上映作品は日本語字幕付きです)
    ・上映作品:『デッドロック』 ローランド・クリック監督、70年、西ドイツ、88分
    ・講演:荒井泰(早稲田大学文学部 助教)
    入場無料、ご予約不要です
    ・主催 上智大学ヨーロッパ研究所

    *なにかご質問がある場合、twitterかfacebookのアカウントまでお問い合わせいただくと、ヨーロッパ研究所にお問い合わせいただくよりスムーズです。

    この作品を日本語字幕付きで観ることができる機会は、本当に本当にもうないと思います。私が個人的に研究しているドイツのメディア・アーティスト、クリストフ・シュリンゲンズィーフとの親和性もあり、来場してくださった方とそのへんもお話できればなと考えています。
    早熟の天才監督によるサイケデリック・ウェスタン、『デッドロック』を見逃さないでください!

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    会場でまたお会いしましょう〜🌟🌟

    藤原理子
    World News 部門担当。上智大学外国語学部ドイツ語学科4年、研究分野はクリストフ・シュリンゲンズィーフのインスタレーションなどドイツのメディア・アート。上智大学ヨーロッパ研究所「映像ゼミナール2014」企画運営。ファスビンダーの『マルタ』のような結婚生活をおくることを日々夢見ております。