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はじめまして、普段はWorld News部門で記事を書いている藤原理子です。

先日、ビダーズ・エンド様からご招待をいただき、5月23日(土)から公開となるジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟の最新作、『サンドラの週末』の試写会に行ってまいりました。

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人気実力派女優マリオン・コティヤールを主演に迎え、ベルギーのプジョーの工場で実際に起きた事件を基に描かれたこの作品は、うつ病を患い休業していた主人公サンドラが、復職直前に解雇を言い渡されることから始まります。サンドラの16人の同僚たちは彼女の復帰か1,000ユーロのボーナスか、どちらかに投票することを迫られます。月曜の投票に向け、「物乞いになったような気がするわ」と言いながら、自分に投票してくれるよう同僚たちの家を訪ね歩くサンドラとそれを支える夫のマニュの週末は……。
対話の連鎖の中で、車窓に流れる景色とともに変化していく登場人物やサンドラ自身がみどころです。

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弱い存在である労働者による連帯、環境改善という厳しいテーマの映画でしたが、サンドラが試みる対話の中で人の心の機微が揺れ動いているさまをありありとみせられ、表象芸術の持つイメージの強さに引き込まれてしまいました。

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5月23日(土)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー !

上映後にはNPO法人POSSEの理事を務め、若者の労働問題に取り組んでおられる坂倉昇平さんと、社会活動家の湯浅誠さんを交えたシンポジウムが行われ、日本とベルギーの労働問題や、労働組合の違いについて話し合いが行われました。
『ロゼッタ』(99)、『ある子供』(05)でカンヌ国際映画祭で2度のパルム・ドールを受賞した監督お二人は、登場人物に寄り添う映画の語り口のようにやさしいお人柄で、冗談もたくさん飛び交う楽しいシンポジウムでした。
シンポジウムの中で、監督のお二人が「自分たちは活動家ではなくあくまで映画作家、映画を作ることにより、観客が議論する切っ掛けを作りたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

労働組合が浸透しておらず、労働問題が深刻化する今の日本だからこそ、ぜひ劇場でこの映画を観て、労働に限らず「連帯」というキーワードについて議論してみてください。
この映画の場合だけでなく、鑑賞後議論するという行動は、後々の文化や社会全体の前進につながると思います。

個人的には、indie TOKYOはこういったweb媒体での情報発信やイベントなどを通して、そういった議論の場としても機能していくのではないかな?と期待しています。

それでは、失礼いたします。

©Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

藤原理子
World News 部門担当。上智大学外国語学部ドイツ語学科4年、研究分野はクリストフ・シュリンゲンズィーフのインスタレーションなどドイツのメディア・アート。上智大学ヨーロッパ研究所「映像ゼミナール2014」企画運営。ファスビンダーの『マルタ』のような結婚生活をおくることを日々夢見ております。