みなさんこんにちは。のりさだです。

 本日は一足お先に試写で拝見した、4月23日公開の『SHARING』をオススメさせていただきます。

 

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 まずわたしが見終わって口から出た感想は、怖かった。すごく怖かった。

 この作品はまず純然たるホラーであり、純然たるサスペンス映画であり、そこに震災というわたしたち日本人の心に深く傷をつけた出来事が乗っかっている。

 

 みなさんがこの記事を読むに当たって、わたしがどのような立場の観客であるかという情報が必要になるかも知れません。わたしは震災当時、地元の神奈川県にいました。高校で部活動をしている最中、おんぼろの校舎が崩壊するかと思ったくらい長く、大きく揺れた。揺れが収まって、高台にある校舎から見えるみなとみらい方面の工場地帯から煙が上がっているのが見えた。体育館に全校生徒が集められ、学校に泊まるようにと言われた。携帯の電池も切れ、何が起こっているのか全く情報が入ってこない中、わたしは友達と非日常のお泊まりを楽しんだ。翌日家に帰るとテレビでひっきりなしに震災の映像が流れているのを見て、やっと事の重大さを把握しました。

 当時は多くの人がそうだったように、わたしもひどくショックを受けました。そんな大変な出来事が起こっていた時にお泊まりを楽しんでいた罪悪感もあった。でも、わたしの日常から震災は数ヶ月のうちに切り離され、世の中からも震災の話題は次第に遠くなっていった。震災で家を失った人たちの住宅の問題や、原子力発電所の問題は未だに解決されていない。テレビの映像が頭から離れない、ふとした瞬間にあの(テレビを通して見た)光景は、忘れられるものではない。しかし、震災の話題を出す事は「なんとなくタブー」になっていた気がします。震災前と同じ(ような)生活を取り戻すことのできたわたしたちが安易に触れていいものなのか、判断し難かった。そういう雰囲気は、みなさんも感じていたのではないでしょうか。

 

 この『SHARING』という作品は、多くの人が避けて通っていた震災という問題を、長い時間をかけて考え、作られた作品です。私はこれを見て、本当にすごいと思った。すでに多くの人が忘れられなくても見て見ぬふりをしている大きな傷跡に、こんなに長い時間をかけて真摯に向き合って作品を作ったなんて、ちょっと信じられないし、本当に偉い(上から目線だなあ)。

 

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 ダブルキャストの女性二人も、震災を直接経験しているわけではない。それもあって、私はすごく共感できました。あるいは違う言葉で言えば、共感させられたとも言えると思う。新文芸坐の王様(Hさん)の言葉を借りれば、「強制SHARING(共感)」。もしかしたら、映画を見終わってから他人と「SHARING」することを強制してくるとも言えるかもしれない。わたしは『SHARING』を見て共感した(させられた)ことを、他の人と共有したいと思った。だから上みたいな、私個人の経験を書くのを止められなかったんだと思います。

 

 パンフレットに掲載されている山田キヌヲさんのコメントを引用します。

--どんなことも共有はできない。でも、理解しようと努めることは、大事だと思うんです。映画のなかで描かれているものを、みなさん、シェアリングしてください、共有してください、なんて言うつもりはありません。ただ、こういう映画が生まれた、そのこと自体は理解してもらえるのではないかと思います。(……)監督がほんとに描きたかったことを、私たちが真の意味で理解しているかどうか、共有していたかどうかはわからないですが、監督の世界を共有しようという努力をみんながして、あの作品が出来上がったことだけは確かです。

 

監督とスタッフとキャストが一つの世界を共有して作り上げた『SHARING』を見て、わたしが共感したことを、わたしはできるだけたくさんの人と感想を共有するというやり方でSHAREしたい。だからぜひ、多くの人に見てもらいたいと思います。

篠崎誠監督『SHARING』は、4月23日(土)公開です。熊本を始めとする九州地方が地震で揺れるこの時期に公開ということですから、『SHARING』を見ることで考えてほしいです。

軽くて楽しい作品ではないかもしれませんが、わたしとしては、ぜひ見て欲しい。みんなでSHAREしましょう!

 

 

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『SHARING』公式HP: http://sharing311.jimdo.com/

【作品情報】2011年3月11日。地震と津波による大災害は、原子力発電所の爆発をも引き起こし、日本人の心に大きな爪痕を残した。あれから5年。放射性物質の漏れは依然として終息の兆しを見せておらず、私たちの生活は、あの時の不安を拭えないまま続いている。本作『SHARING』(共有の意)は、そうした震災後の日本人の心の問題に、映画的な想像力を駆使して、真正面から向き合おうとしたフィクションである。なお、この映画には、登場人物の一部、展開も大きく異なる2つのヴァージョン(99分版と111分版)が存在している。どちらか一方がディレクターズカットではなく、劇中で語られる分身(ドッペルゲンガー)のように、この2つのヴァージョンがお互いを照らし、未来に対する希望と怖れを炙り出していく。

【STORY】社会心理学者の瑛子(山田キヌヲ)は、東日本大震災の予知夢を見た人を調査している。誰にも打ち明けていなかったが、彼女は震災で死んだ恋人の夢をずっと見続けていた。一方、同じ大学の演劇学科に通う薫(樋井明日香)は、卒業公演の稽古に追われている。ある時、311をテーマにしたその公演を巡って、仲間たちと決定的に衝突してしまう。薫もまた、この芝居を初めてから同じ夢にうなされていたのだが…。

 

 

則定彩香
WorldNews部門、新文芸坐シネマテークゆるキャラ(のりさだちゃん)、オルタナS執筆、ときどき取材カメラマン。横浜国立大学都市イノベーション学府にてバザンとトリュフォーを研究中。