1月11日より、新宿武蔵野館他全国で大橋裕之・原作、岩井澤健治・監督による長編アニメーション映画『音楽』が順次公開されている。本作は楽器を触ったこともなかった不良青年たちが思い付きでバンドを組むところからはじまるロック奇譚。原作は2009年に出版された「音楽と漫画」。

実写化不可能とも言われた大橋裕之による原作

 監督の岩井澤健治は延べ40000枚を超える作画をほぼ独力で、すべて手描きで行い、本作の製作期間はおよそ7年にも及んだ。ラストの野外フェスシーンでは実際にステージを組みミュージシャンや観客を動員してのライブを敢行するなど、監督の熱意と執念が光るかつてない長編アニメーションプロジェクトである。2分ほどの野外フェスシーンにはおよそ2年もの年月が費やされた。原作の大橋と監督を務めた岩井澤はアルバイト先が同じという共通点から実生活でも親交があり、この7年の間では偶然街角で出会い、本作についての話をすることも多くあったという。そうした両者の関係性も本作の空気感に投影されている。

 思い付きでバンド「古武術」を組む不良高校生・研二役を坂本慎太郎、研二の同級生・亜矢役を駒井蓮、「古武術」のメンバー・太田役と朝倉役を前野朋哉と芹澤興人、「古武術」をフェスに誘う「古武術」のメンバー・森田役を平岩紙、そして研二を敵視する丸竹工業の不良・大場役を竹中直人がそれぞれ演じる。研二役を演じる坂本慎太郎には原作・大橋裕之みずからがオファーした。さらに物語の中のどこかには岡村靖幸も登場している。音楽への愛に溢れたキャストたちが物語を彩る。主題歌はドレスコーズによる書下ろしの新曲「ピーター・アイヴァース」。制作の傍らでずっとドレスコーズの音楽を聴いていたという岩井澤たっての希望によるオファーが実現した。完成した本作はオタワ国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門でグランプリを受賞。気まぐれと情熱を志向するすべての人たちに、『音楽』は劇場で響く。

  

 

『音楽』

1月11日より、新宿武蔵野館ほかにて順次公開中

原作:大橋裕之「音楽 完全版」(カンゼン)

脚本・絵コンテ・キャラタクターデザイン・作画監督・美術監督・編集:岩井澤健治 
主題歌:ドレスコーズ「ピーター・アイヴァース」(キングレコード/EVIL LINE RECORDS)
製作:ロックンロール・マウンテン Tip Top
監督:岩井澤健治

2019年/日本/ヴィスタサイズ/5.1ch/カラー/71分
配給:ロックンロールマウンテン/配給協力:アーク・フィルムズ/宣伝:Tip Top 平井万里子 下北沢映画祭
©大橋裕之 ロックンロール・マウンテン Tip Top

公式サイト:http://on-gaku.info/

予告編:https://youtu.be/asADrOdlcEY

 

 

 

川窪亜都 2000年生まれ。都内の大学で哲学を勉強しています。散歩が好きです。