今年2月に開催された恵比寿映像祭で一際話題になった草野なつか監督作『王国(あるいはその家について)』が、8/2(金)~8/4(日)に三鷹SCOOLにて上映されることが決定した。草野監督の長編初監督作である『螺旋銀河』も併映される。各日上映後には、映像作家であり振付師・ダンサーである吉開菜央、詩人の水下暢也、早稲田大学教授の細馬宏通といった多方面で活躍するゲストを招いたアフタートークも開かれる予定。また、最終日8/4(日)に行われる映画上映としては珍しい試み「明転上映」も見逃せない。
俳優が、決して撮影されることのないシーンのリハーサルや台本の読み合わせを繰り返しながら役を獲得する過程を捉え、反復と前進により物語が現れてくる大胆で野心的な、しかしそれでいて繊細さも併せ持つ驚くべき作品を、この機会に是非多くの方に体験して頂きたい。

『王国(あるいはその家について)』
出演:澁谷麻美、笠島智、足立智充、龍健太
監督:草野なつか 脚本:高橋知由 撮影:渡邉寿岳
音響:黄永昌 助監督:平波亘 美術:加藤小雪(TASKO)
衣装:小笠原吉恵 ヘアメイク(フィクション部分):寺沢ルミ
編集:鈴尾啓太、草野なつか 写真:黑田菜月 演出助手:神田友也
手紙文作成:高橋知由、澁谷麻美
イラスト・タイトルデザイン:さいとうよしみ
エンディング曲:GRIM「Heritage」
プロデューサー:鈴木徳至
愛知県美術館美術品収集委員会・オリジナル映像部会委員:天野一夫、岡田秀則、岡村恵子、酒井健宏
エクゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司
企画:愛知芸術文化センター 制作:愛知県美術館
2016年度愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品
(2018年/カラー/4:3/150分)

<あらすじ>
出版社の仕事を休職中の亜希(澁谷麻美)は、一人暮らしをしている東京から、1時間半の距離にある実家へ数日間帰省をすることにした。それは、小学校から大学までを一緒に過ごしてきた幼なじみの野土香(笠島智)の新居へ行くためでもあった。
野土香は大学の先輩だった直人(足立智充)と結婚をして子供を出産し、実家近くに建てた新居に住んでいた。その家は温度と湿度が心地よく適正に保たれていて、透明の膜が張られているようだった。まるで世間から隔離されているようだと亜希は思った。最初は人見知りをしていた野土香の娘・穂乃香は、亜希が遊びの相手をしているうちに彼女に懐いた。一方、野土香からはとても疲れているような印象を受けた。
数日後。亜希は東京の自宅にいた。彼女は机に座り手紙を書いていた。夢中でぺンを走らせ、やがて書き終えると声に出して読み始める。
「あの台風の日、あの子を川に落としたのは私です」
そして今、亜希は警察の取調べ室にいる。野土香との関係や彼女への執着、直人への憎悪について、亜希は他人事のように話し始めた。

『螺旋銀河』
出演:石坂友里、澁谷麻美、中村邦晃、石橋征太郎
監督:草野なつか 脚本:高橋知由、草野なつか
統括プロデューサー:城内政芳
音楽:上野紘史 撮影:岡山佳弘 照明:田上直人
録音:島津未来介 助監督:滝野弘仁、花山奈津
ヘアメイク:小野寺里紗 整音:黄永昌 編集:鈴尾啓太、草野なつか
制作:今田恭輔、徳元優太、佛木雅彦
助成:第10回シネアスト・オーガニゼーション・大阪(CO2)
配給:リトルモア/ヨアケ
(2014年/日本/カラー/16:9/ステレオ/73分)

<あらすじ>
シナリオ学校に通う綾(石坂友里)の原稿が学校課題のラジオドラマに選ばれるが、共同執筆者を立てることが放送の条件だと言われる。嫌がる綾は、偶然言葉を交わした会社の同僚・幸子(澁谷麻美)のおとなしい性格に目をつけ、共同執筆者に仕立て上げようとする。地味な自分とは違う華やかな綾に憧れ近づきたいと思う幸子、美人だが自分本位な性格が災いして人間関係を構築できない綾。対照的な二人の関係による“ラジオドラマの共作”は、やがて彼女達を奇妙な空間へと誘うが…。

【監督プロフィール】
草野なつか
1985年生まれ、神奈川県出身。東海大学文学部文芸創作学科卒業、映画美学校 12期フィクション・コース修了。2014年『螺旋銀河』(第10回CO2助成作品)で長編映画を初監督。同作品で第11回 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて SKIPシティアワードと監督賞を受賞、ユーロスペースを皮切りに劇場公開。長編2作目である『王国(あるいはその家について)』はロッテルダム国際映画祭や恵比寿映像祭などで上映される。フィクションとドキュメンタリーのはざまを常に模索しながら、作品作りを続けている。

【上映日程】★上映後アフタートークあり
8/2(金)
19:30~22:00★ 『王国(あるいはその家について)』

8/3(土)
16:00~17:15  『螺旋銀河』
18:30~21:00★ 『王国(あるいはその家について)』

8/4(日)
13:30~16:00  『王国(あるいはその家について)』
16:15~18:45★ 『王国(あるいはその家について)』明転上映(※チケット半券で入場可・退場自由)

※予約方法などの詳細は下記サイトをご確認ください。
■イベント公式サイト
http://scool.jp/event/20190802/

■作品公式Twitter
@DOMAINS_movie

『王国(あるいはその家について)』予告編

『螺旋銀河』予告編

IndieTokyoメンバーによる『王国(あるいはその家について)』連続レビューはこちらから↓

▼『王国(あるいはその家について)』レビュー #1(吉田)

▼レビュー #2 ~見えないはずの王国が現れる時~(サトミン)

▼レビュー #3 ~生身の人間から生まれる物語~(佐藤) 

鈴木里実
映画に対しては貪欲な雑食です。古今東西ジャンルを問わず何でも見たいですが、旧作邦画とアメリカ映画の比重が大きいのは自覚しています。