前回のレビュー(『ウィリー ナンバー1』 http://ur0.work/IeR2 )はおじさんががんばる話でしたが、この『ロックンロール』ではおじさんが迷走します。

 

イタい、イタすぎる。でも笑える。でもやっぱりイタい・・・。イタおもしろいとでも言うのでしょうか。43歳、中年クライシスに陥ったギヨーム・カネが、自分がまだまだ「イケてる」ことを示そうと必死になるという話なのですが、その空回り、迷走っぷりがイタすぎて、「この監督はギヨームに何か恨みでもあるのか?」と思っていたらギヨーム本人が監督してました。うーん、自虐的だ・・・。

 

ギヨーム・カネが監督、本人役で主演をつとめ、私生活でもパートナーであるマリオン・コティヤールや、「同世代」(キーワード!)の俳優ジル・ルルーシュ、フランスの国民的ロックスターのジョニー・アリディ(昨年12月に死去、享年74歳)などがいずれも本人役で登場しています。

ある映画の撮影で、父親役のギヨームは娘役を演じる若い女優、カミーユとインタビューを受けることに。雑誌エルのインタビュアーもこれまた若い美女で、いい気になっていたギヨームはカミーユに衝撃的なことを言われてしまいます。「あなたには、セックス・ドラッグ・ロックンロールのイメージがない」と。このあたりから急にギヨームが空回り始めます。小さい頃からギターをやってるとか、ドラッグは一通り試したとか、セックスライフは絶好調だ、などと必死にアピールするギヨーム。もうこの時点でだいぶ空回っていて、なんとも言えない「ダサさ」が漂っています。カミーユもインタビュアーも「何言ってんのかしらこのおっさん」とでも言わんばかりの白けた空気を隠そうともしません。「フランスギャルは容赦ないなぁ」なんてこれまたおじさんぽい感想が頭に浮かびますが、おじさんをステレオタイプ化してはいけませんね。ごめんなさい。

 

このインタビュー以降ギヨームは中年クライシスに陥り、自分がまだまだロック(「イケてる」)ことを証明するため、あらゆることに挑戦します。定時に帰るのをやめてみたり、マリオンに「今夜お前を無茶苦茶にするぞ」なんて言って呆れられたり、薄くなってきた生え際を黒く塗ってみたり・・・。ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、後半はもはや原型をとどめていません。若く見せようと色々やってみた結果、あらぬ姿になってしまったギヨーム、それでもマリオンは彼を愛し続けるのか――?

ギヨーム・カネの自虐的なまでの迷走っぷりとマリオン・コティヤールの美しさが絶妙なハーモニーで、笑いを誘います。ぜひご鑑賞ください。

 

まだまだ期間中は、12本の長編映画と、11本の短編映画も無料配信されています!
また、2月2~4日にはアンスティチュ・フランセ東京にて、映画祭配信作品の上映も予定されていますよ。

 

【第8回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル】
開催期間 :2018年1月19日(金)~2月19日(月)
料金   :長編映画-有料(各配信サイトの規定により異なる)、短編映画(60分以下)-無料
配信サイト:青山シアター、アップリンク・クラウド、VIDEOMARKET、ビデックスJP、DIGITAL SCREEN
短編のみ :GYAO!、ぷれシネ
長編のみ :iTunes、Google Play、Microsoft Store、Amazon Instant Video、Pantaflix
※配信サイトにより配信作品や配信期間が異ります。

公式サイト www.myfrenchfilmfestival.com

アンスティチュ・フランセ東京
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema18020204/

 

indieTokyoのメンバーによるレビューブログも続々と続きますよ!お楽しみに!

 

澤島さくら

京都の田舎で生まれ育ち、東京外大でヒンディー語や政治などを学んでいます。なぜヒンディー語にしたのか、日々自分に問い続けています。あらゆる猫と、スパイスの効いたチャイ、旅行、Youtubeなどが好きです。他にもいろいろ好きなものあります。