福永壮志監督の作品『リベリアの白い血』が8月5日から渋谷アップリンク他全国で順次公開します。
この作品はニューヨークを拠点に活動する福永壮志監督の初長編デビュー作で、アフリカとアメリカを舞台にした移民の物語です。
福永壮志監督は、北海道出身で現在はニューヨークを拠点に活動している若手映画作家です。
昨年には『カンヌ国際映画祭』の新人監督育成プログラム「シネフォンダシオン・レジデンシー」に選出され、
今後大注目の映画作家でもあります。
そして、忘れてはならないのがこの映画の撮影監督を務めた村上涼さんです。
村上涼さんは、徳島県育ちでニューヨークを拠点にしていた撮影監督です。
撮影した作品の多くは世界中の著名な映画祭で上映され、数々の賞を受賞しています。
しかし2013年の6月29日にリベリアでの撮影後、マラリア発症により亡くなりました。
『リベリアの白い血』は村上さんの故郷でも公開を予定しています。
リベリアの過酷な労働状況のゴム農場で働くリベリア人のシスコが
家族のより良い生活の為に単身でニューヨークに渡り、移民の現実に直面する姿を描きます。
しかしここで監督が描くテーマは、リベリアに限られたものではありません。
いわゆる“アメリカン・ドリーム”を夢見て
ニューヨークに渡ったリベリア人のシスコが
直面する現実は、まさに私達が生きる世界のサイクルを描いています。
消費する側と消費される側の埋まらない格差。
『リベリアの白い血』を観ると、
商品の原料を提供する彼らはどう頑張っても這い上がれない仕組みになっていることがひしひしと伝わってきます。
私達の生活の殆どが誰かの搾取の中で成り立っているということ。
私達が着ている服、生活用品、何から何まで全ての物が誰かの犠牲の上にあるということ。
彼らの犠牲を消費する側の私達は、少しでも彼らの生活に思いを馳せたことがあるでしょうか?
この世界の問題を意識し、向き合うことが必要とされていると思います。
そしてどの世界でも変わらない家庭の中での女性の強さも描かれ、必死に生きようとする彼らの力強さにも心を打たれました。
正直映画を観ていても私達と全く違う文化や環境のリベリアを身近なものとして捉えるのは難しいと感じましたが、
夫婦の関係性には身近さを感じ、同じ人間であることを感じました。
また、個人的には、リベリアでのラジオの存在感も印象的でした。
リベリアに住む彼らは、もはや私達にはなくてはならない情報を手に入れるためのツール、スマートフォンを持ちません。
連絡手段としてケータイは持っていますが、貧しい彼らはスマートフォンを持てないのです。
だから彼らは、情報をラジオをというツールを通して手にいれています。
そのラジオを大事にする姿からは、情報を手に入れることの重要性が伝わります。
88分という時間のなかに、私達が向き合うべき問題が映されています。
この映画が沢山の人に届きますように。
そして問題に向き合うきっかけになりますように。
永山桃
早稲田大学一年生。二階堂ふみさんと、池脇千鶴さんと、田中絹代さんが好きです。役者を志していますが、いろいろな形で、映画に一生関わって生きていきたいです。あとは、猫が好きなのに、柴犬をかっています。ワンワン!