B5_omote_kan_ol11/21(土)より開幕する第25回映画祭TAMA CINEMA FORUMにて、映画祭25周年を記念した「日仏映画交流企画」を、映画祭最終日の11/29(日)に開催します!
見逃すと今後見ることが難しい作品を揃え、海外のゲストと話題の日本映画のゲストを迎えて、いまのインディペンデント映画の最前線を探るトークも行う大充実のプログラムです!2つのプログラムの見所をご紹介します。

【プログラム紹介】
「ジャック・ドゥミ 恋の果てに見る夢」<特別協力:アンスティチュ・フランセ日本>
http://www.tamaeiga.org/2015/program/B-9.php
「日仏インディペンデント映画の新たな潮流」<特別協力:広島国際映画祭>
http://www.tamaeiga.org/2015/program/B-10.php

■「ジャック・ドゥミ 恋の果てに見る夢」
lola今年没後25年のジャック・ドゥミ監督の初長編監督作『ローラ』(61)と、その続編『モデル・ショップ』(69)を上映します。
『ローラ』のDVDはいま廃盤で、『モデル・ショップ』は今回の上映のためだけに上映権利を取得したので、なかなか貴重な機会です。

『ローラ』は、幸せと愛を求める人たちの儚いきらめきが、互いに折り重なって結晶化したような作品。ジャン=ピエール・メルヴィルが「ヌーヴェルヴァーグの真珠」と称しただけあります。ラウール・クタールによる瑞々しいモノクロ映像と、その後何度もコンビを組むミシェル・ルグランの切ない音楽が心に染みます。水兵や港町といったモチーフが登場する、ドゥミのエッセンスが詰まった原点にしてマスターピース。

model_shop『モデル・ショップ』は、『ローラ』の続編でドゥミ唯一のアメリカ映画。前作とは打って変わって、陰鬱さが漂っています。描かれるのは、ベトナム戦争に徴兵される前日を虚ろに過ごす青年と、夢を求めてアメリカに渡ったローラとのつかの間の交流。画面には表れない飛行機の轟音が、青年の家の外で鳴り響いて不気味さを醸しています。戦後70年、安保法制が大きく話題の今年のいまこそ特に観るのにぴったりな作品だと思います。
両方ともアヌーク・エーメ演じる“ローラ”が登場するんですが、『ローラ』と『モデル・ショップ』では一見違うキャラクターかと思うくらい雰囲気が異なります。フランスのナントで忘れられない初恋に胸ときめかせていたローラが、果たしてアメリカに渡ってからどう過ごしているのか。ぜひ2作品続けて鑑賞して確かめてみてください。

■「日仏インディペンデント映画の新たな潮流」
Rolling_main本年最も話題となったインディペンデント映画の1本『ローリング』(監督:冨永昌敬)と、 『若き詩人』が日本公開間近のダミアン・マニヴェル監督が推薦し、L’Acid(独立系映画配給組合)が支援した『Day(原題:Rives)』(監督:アルメル・オスティウ)を上映します。
上映後には、アルメル・オスティウ監督、ヤスミナ・シジェシクさん、冨永昌敬監督、柳英里紗さん、大寺眞輔さんによるトークを開催します。水戸短編映像祭をきっかけに作られた邦画と、L’Acid支援の仏作品を通じて、日仏のインディペンデント映画の最前線について迫ります!

『ローリング』は、グルーヴィーでユニークな傑作です。少しずつ変な方向に転がって、新しい次元に到達してしまう。軽やかでしなやかで、いま必要なのは頑丈さではなくこういう強さなのだと思います。見事な役者のアンサンブルと演出とが揃った唯一無二の作品。映画作りはもちろん、柔軟で創造的な生き方(!?)の参考にもなるのでは。ダメ男の転落の果てには、なぜか朝日のような爽やかさが漂っています。こちらIndie Tokyoでも大プッシュされてましたね(6/7に行われたトークレポートはこちら!)。

day『Day(原題:Rives)』は、2011年のL’Acid部門でプレミア上映された作品です。本作を推薦したマニヴェル監督は、2010年に同部門で短編「犬を連れた女」を発表しています。
L’Acidは、1991 年、大手チェーンによってスクリーンを奪われてしまったフランスの当時の映画作家たちが、自分たちの作品の上映場所を取り戻すために立ち上がった組織です。カンヌ国際映画祭のL’Acid 部門は、93 年から始まり、現在同映画祭で最も新しい才能が発見される部門として注目されています(こちらIndie Tokyoでも過去に紹介されていました。→[160]「スクリーンを解放せよ!」 L’ACIDがやってくる!http://indietokyo.com/?p=527

『Day』は、ポエティックで不思議な感触を味わえる作品。これはぜひ劇場の大きな画面と音で体感した方がいいです。都市をさまよう3人の登場人物がそれぞれに遭遇するさまざまな反射や運動。それらが説明なしにポリフォニックに紡がれて、日常に潜む別の次元を知覚させてくれます。監督がミュージックビデオを制作していた経験が伺えるポップなセンスにも注目です。軽快だけれども表面的ではなくて、少しずつ心の内奥に響いて来て揺さぶるような懐かしさがあります。
本作にはギョーム・ブラック監督作品などでおなじみのヴァンサン・マケーニュが1シーンだけ出演しています。主演作『メニル・モンタン 2つの秋と3つの冬』(セバスチャン・ベベデール監督)も公開間近ですね。彼は、オスティウ監督の長編第2作『Une histoire americaine』(2015)に主演していて、過去にアンスティチュ・フランセ東京でも上映されたことのある中編『キングストン・アベニュー』(2012)でも二人は組んでいます。ブラックやベベデールの同世代監督としても、オスティウ監督は今後要注目です。
『Day』は国内配給未定なので、この機会をぜひお見逃しのないように!

上映後に行われるトークもお楽しみに。『Day』に出演のシジェシクさんは、主にプロデューサーとして活躍していて、若手作家の製作状況にも詳しい方です(前述のオスティウ監督の長編第2作は、彼女のプロデュース)。『ローリング』に出演の柳さんは、ご存知の方も多いかと思いますが、インディペンデント映画の出演経験豊富な方です。両監督の作り手の視点、批評家の視点と合わさって、きっと色々なお話が聞けることでしょう。
チャレンジングで刺激的な作品を求める人におすすめのプログラムです。

さまざまなイベントが盛りだくさんの時期ですが、ぜひ当映画祭にお越しいただけたら幸いです。

【日時・会場】
11月29日(日) パルテノン多摩 小ホール(小田急多摩線/京王相模原線/多摩都市モノレール「多摩センター駅」より徒歩5分。)
【チケット料金】※全席自由席
一般:前売1200円(当日1400円)/子ども(4歳~中学生):前売800円(当日900円)
e+(イープラス)及び市内各販売所にてお取扱中。詳細は、下記の映画祭HPよりご確認ください。
【映画祭公式サイト】
http://www.tamaeiga.org/2015/

【添付画像コピーライト】
『ローラ』<「© 2012 CineTamaris-Fondation Groupama >、『モデル・ショップ』…<© PARK CIRCUS LIMITED>
『ローリング』…<©2015「ローリング」製作委員会>、『Day』…<©Bocalupo Films>

佐藤友則
プロフィール:映画祭TAMA CINEMA FORUM実行委員。大学生の頃からはじめて8年目。企画とか会報作成とか色々やってます。猫と蕎麦が好き。