角川シネマ新宿にて、1月16日から、
市川崑監督の100年記念映画祭「市川崑 光と影の仕草」が開催されています。

先日1月29日は「野火」が上映されました。

そのトークゲストとして、昨年2015年の夏から上映が開始された、「野火」の監督である塚本晋也監督が登壇されました。

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塚本監督は、大岡昇平の小説「野火」を高校生の時に読み、塚本監督自身が主人公である田村一等兵として戦争の恐ろしさを感じることが出来たことや、田村の見た景色が思い浮かんだことから「野火」を映画として作りたいと思ったそうです。
そしてそれから約40年を経て、昨年完成した塚本監督の「野火」と、市川崑監督の1959年に作られた「野火」について、改めてこの場で語ってもらいました。

塚本監督は映画で田村一等兵を演じているわけですが、役者として芝居をした、そして監督として、映画を撮った感覚ではなく、塚本監督自身が「野火」をフィリピンという大自然で体験した、と語りました。監督自身が「野火」の世界にどっぷりと入り込んだ感覚だったようです。

そのように映画を制作したからこそ、私たち観客は塚本監督の「野火」を観て、戦争という恐ろしい現実をどの映画にも勝って感じたのかもしれません。

また監督は、監督が感じる市川監督の「野火」との違いを挙げていました。
ひとつは、同じ大岡昇平の小説「野火」を映画化したわけですが、戦争を体験し、上映時にもまだまだ戦争を体験した日本人がたくさんいた中で作られた「野火」と、戦争を体験していない日本人に、戦争の恐ろしさを伝えたいと作られた「野火」と、作られた時代の違いがこの映画の違いではないか、ということ。

 

nobi     野火

 

さらに塚本監督は、監督自身は原作に忠実に作っているが、市川監督はかなり脚色をしていると話していました。具体的に挙げると、”サルの肉”をめぐるシーンです。塚本監督は、原作の田村の”サルの肉”を食べる/食べないの強い葛藤を、市川監督の「野火」では歯がボロボロで食べられないと変えることで上手く映画的に置き換えている、そしてそこに、絶対に”サルの肉”を食べさせないという作り手の思いを感じると語り、このトークを締めくくりました。

この話の他にも、中学生の時から、8ミリで映画を撮っていて、市川崑監督に影響されて作った映画の話、昔は映画監督か、冒険家どちらかになろうかと迷っていたお話など、たくさんのことを語っていました。

皆様も監督の語っていた違いを踏まえて、「野火」や他の作品を劇場でを観てみてはいかがでしょうか?

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永山桃
早稲田大学2年生。二階堂ふみさんと、池脇千鶴さんと、田中絹代さんが好きです。いろいろな形で、映画に一生関わって生きていきたいです。あとは、猫が好きなのに、柴犬をかっています。ワンワン!