本日5月21日(土)~27日(金)まで横浜ジャック&ベティにて『風』(監督:ヴィクトル・シェストレム 主演:リリアン・ギッシュ)がピアノ伴奏付きで上映されます。
サイレント映画ピアニストの柳下美恵さんのピアノ演奏付きでサイレント映画を鑑賞するという今回3回目の上映会です。

ところで話が脱線しますが、渋谷にある「八月の鯨」というBARをご存知でしょうか。
映画をイメージしたカクテルが飲めるBARで私も行きますが、BARの名前になってる「八月の鯨」は今回上映された「風」のリリアン・ギッシュが主演なんですよね。
そんなことしかしらない状態で本日上映一日目、見に行ってきました!
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チラシのあらすじを読んで、強制的に結婚させられた主人公レティのメロドラマかな、ラブストーリー好きだし楽しみ!なんてのんきに思っていました。
……確かにメロドラマなんです。でもこれはホラーに近い!
花柄のワンピースを着た世間知らずな少女レティは結婚相手のライジのことが受け入れられなくて、でも徐々に惹かれ出して…なんてかわいらしいストーリーではないんです。
サスペンス要素が出てきてなんとレティが…!結末に至るまでがまるでホラーのような…

そのホラーのようなシーンを際立たせているのは、柳下さんのピアノ演奏です。
恐怖心がより煽られて臨場感があり、客席とピアノとの距離感が近いため直に演奏が響いてきて映像をより効果的に感じられます。
柳下さんの即興生演奏だからこそ生み出される豊かな表現を是非劇場で体感してほしいです。

レテイ役のリリアン・ギッシュは射抜くような力強い目が魅力的。
(砂嵐が吹き荒れるシーンでよくあんなに大きな目が開けられたなぁなんて思ったり)
彼女の大きな目は言葉や声を使わなくても多くの感情が伝わってきて映画の中で一際光っていました。
また、モノクロ映画だからこそ表現できる光と影の陰影やランタン火の動きがシーンをより演出していて、モノクロ映画の想像しながら鑑賞する楽しさを改めて実感しました。

この上映会は本日と25日(水)の上映後、柳下さんを囲むお茶会があります。
さらに本日はリリアン・ギッシュからの直筆の手紙をもっている宮下啓子さんをゲストとしてお茶会が行われました。
ついさっきまで映画を鑑賞して興奮状態のまま参加した観客のみなさんが、映画の感想を語り合います。
「カルトムービーみたいだった」「見方によっていろんな解釈ができた」「出ていける環境にあるのに出ていかないストーリーが安部公房原作の『砂の女』を連想させた」など熱く様々な感想が出てきます。
それに対して宮下啓子さんの映画解説やリリアン・ギッシュの裏話は映画に対する解釈や知識を深められて非常に濃密な時間を過ごせました。
映画ファンが集って語りだすとこんなにも時間があっという間に過ぎるのでしょう!

砂嵐のシーンに表れる馬はヨーロッパ的な表象表現であること、砂嵐が吹き荒れる中でもレティが帽子を被るのは世間知らずな性格を表していること、劇中で少女を演じたリリアンは撮影当時35歳だったこと、実はあのラストはハッピーエンドを好まれた時代に作られたからであり本当は全く違うラストになっていたかもしれない……など、映画を見たあとに聞くともう一度見返したくなるようなお話を聞くことができました。
ぜひ27日までに劇場に足を運んで確認してみてください。

ピアノ演奏付き「風」上映会はジャック&ベティにて14時から一週間限定上映です。
美しいピアノ演奏とともにサイレント映画ならではの映像美の贅沢な80分間を堪能してください!
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J&B美恵’sサイレント映画 vol.3「風」
http://www.jackandbetty.net/cinema/detail/961/