今年で第20回目を迎えた東京フィルメックス。

本記事では、28日(木)に上映された『春江水暖』『昨夜、あなたが微笑んでいた』について紹介します。

グー・シャオガン監督『春江水暖』コンペティション部門

中国 / 2019 / 154分 

この映画は、祖母の誕生日パーテイーの場面から始まる。家族が次々と祝辞を述べ、明るいお祝いの雰囲気の中、突然祖母が脳卒中で倒れてしまう。彼女は不幸にも介護を必要とする状態となってしまい、4人の息子とその家族がお世話をすることになる。しかし4人の息子はそれぞれ彼ら自身や家族間に問題を抱えており…。そんな彼らの姿を通して中国ならではの伝統と、変わりゆく社会や家族関係を悠然と描く。

横移動のカメラワークとロングショットが、杭州の富陽の美しい自然を描き出す。監督は山水長巻「富春山居図」にインスピレーションを受けたと話し、そこから映画を絵巻物のように描くことに決めたという。

続編にも意欲的な監督。変わりゆく中国を記録する記録映画としても重要な映画になるかもしれない。

 

ニアン・カヴィッチ監督『昨夜、あなたが微笑んでいた』コンペティション部門

カンボジア、フランス / 2019 / 77分 

 

1963年に建てられた集合住宅ホワイトビルディング(カンボジア・プノンペン)が舞台のドキュメンタリー。日本企業による買収が2017年に決まり、取り壊しが決定された。映画は、買収により立ち退きを余儀なくされたホワイトビルディングに住む人々を中心に描いている。

アーティストや学者が多く暮らしているというホワイトビルディング。立ち退きに際して、それぞれの暮らしの思い出や、建物への思いを語る姿が印象的だ。誰もいない屋上、廊下、建物を捉えるカメラワークも素晴らしい。差し込む光にノスタルジーを感じる。人々は長く暮らしたホワイトビルディングを後にしてどこへ行くのか。その後も知りたいと思った。

東京フィルメックス公式サイト:https://filmex.jp/2019/

 

永山桃
早稲田大学4年生休学中。

猫が好きなのに、柴犬をかっています。ワンワン!