こんちには。

 

日本では、東京国際映画祭が閉幕しましたね。フランス映画『Amanda(原題)』がグランプリを受賞したとのこと!フランスでは11月21日から公開です。ミカエル・アース監督の前作『サマー・フィーリング』の雰囲気がすごく繊細で美しかったので、本作も非常に楽しみです!

 

 

フランス・リヨンより、当ブログで数回に渡ってお届けしているリュミエール映画祭情報。今回が最後。

今日は私が参加した“ボランティアスタッフとしての映画祭”5日間の様子を、2回に分けてお届けします。

まえがき

10月13日~21日に行われていた当映画祭。私はベネヴォル(ボランティアスタッフ)になるため、6月からアンスティチュ・リュミエール*の説明会やプレゼンテーションに参加したり、会員登録したりと着々と準備してきました。そしてついに、念願のベネヴォルになれたわけです!

 

*アンスティチュ・リュミエール(Institut Lumière):

映画祭を主催するリュミエール研究所。リュミエール美術館、資料館、図書館、映画関連本屋、映画館を保有する。所長を映画監督のベルトラン・タヴェルニエ氏、ディレクターをカンヌ映画祭総代表も務めるティエリ―・フレモ―氏が務める。共にリヨン育ち。リュミエール兄弟による世界最初の商業映画『工場の出口』が誕生したこの地リヨンで、第七芸術=映画に感謝と敬意を込めて2009年にリュミエール映画祭を創設。

 

 

JOUR  1 一期一会の出会い

ミッション:本部設営、片付け

場所:Village Cinéma(映画祭本部、リュミエール美術館広場)

 

 

「DVDマルシェ」設置のため、DVDの入ったえげつない量の段ボールをひたすら運び続ける、という地味な体力作業。また、招待客用プレゼントバッグ(カタログ、いくつかのグッズ、カフェチケット、リヨンの地図、関連新聞などの詰め合わせ)を何千組と用意する。年配のお姉さまボランティアさんも多くいらしてましたが、体力作業は“阿吽の呼吸で”自然と数少ない若者に…。

さすがフランス人。何をしてても、どんなに疲れてても、お喋りは絶やしません!

 

 

ここで女優志望の学生さんと出会う。倦怠感漂う色気を持ちながら、力強いな目力を持つ22歳の女性。英語もしゃべれる彼女は、「卒業したら演技の勉強するために国を出る」と言った。いつか、きっと、素敵な国際的な女優さんになってくれることでしょう。

 

 

JOUR  2 映画館勤務が活かせる現場

ミッション:会場案内・整理

場所:映画館(Cinéma Lumière)

 

 

リュミエール映画祭の最大の特徴、それはリヨンにあるすべての映画館にて、同時進行的に映画祭上映が行われるというスタイル。たった10日たらずで、174本の映画を、60個所で、421上映行うんですから!リヨンのすべての映画館や劇場、コンサートホールが映画祭会場となり、ほぼ全ての上映が満席で、空席待ちが大勢押し寄せる状態。

 

それゆえ、それぞれの映画館、それぞれの上映(各スクリーン)に会場案内係が数人ずつ必要になり、既存の映画館社員だけでは到底手に負えません。従って、同時に多数必要になる会場案内はもちろんボランティア。さらに、各上映のチケットスキャン担当いわゆる”もぎり係”もボランティアが担います。

また、要援助・車椅子のお客様には別経路でご案内したり、団体客対応をしたり。やっていることは映画館勤務と同様。映画館・接客経験ありの自分にはもってこいの業務でした。

 

業務前にこんな感じでブリーフィングを行います。

 

化粧室チェックに入った際、イングマール・ベルイマン監督作『ある結婚の風景』のプレゼンターとして待機中のグザヴィエ・ルグラン監督(『ジュリアン』が2019年1月25日公開予定)とばったり!さらに、私に出入口の扉を開けてくれて「お先にどうぞ、マダム。」とさらっと言うダンディすぎる振舞いに、心臓バクバクドキドキ!

ご多分に漏れずミーハーな自分に失笑…

 

 

JOUR  3 トラブル発生!その状況を救ったのは…

ミッション:会場案内・整理

場所:映画館(Cinéma Pathé)

 

 

シドニー・ルメット監督作『十二人の怒れる男』の上映。

大スクリーンでの上映が始まって早々、フランス語字幕が出ないというハプニング発生。満席かつ学校のプログラムの一環で参加している高校生ら多数、という上映にもかかわらず!よりによって密室法廷会話劇の本作。英語の分からない多くのフランス人観客(悪口ではない!)は、ちょっとしたパニックで、ざわざわと文句の嵐。すぐに再び最初から再生するも、やはり字幕は映らず。劇中の3番陪審員のように、怒りの感情をあらわにして派手に会場を後にする者も…。

 

すると、上映前に登壇していたプレゼンターの仏女優アンヌ・コンシニが私服のバックを持って(帰ろうとしていた?)そそくさと舞台上に舞い戻りました。そして「え~、ではこの間に、私のワンマンショーでもしましょうか?」と怒れる観客らを一気に沸かせたのです!誰に頼まれたわけでもなく咄嗟にこういうことができるタフさ、素晴らしい!

約30分後に復旧の連絡が入り、盛大な拍手の中会場を後にしたアンヌ・コンシニさんでした。

 

登壇するクロード・ルルーシュ監督。

 

421上映、ほとんどの上映にプレゼンターがいます。新作『ROMA/ローマ』のプレゼンテーションにはアルフォンソ・キュアロン監督自身が、イングマール・ベルイマン作品には主演女優リヴ・ウルマン、キン・フー作品には主演女優チェン・ペイペイを招いたり。当該作品の監督や俳優だけでなく、世界中からの批評家や研究家、プロデューサー、製作陣、映画会社重鎮(ゴーモン会長ニコラ・セドゥなど)など多岐に渡ります。これはティエリー・フレモー氏の広い人脈により実現したのでしょう。彼ら目当てで鑑賞作品を決める客も多いそうな。

また、プレゼンターの滞在先から会場までの誘導(運転含む)係も、なんとボランティアです!相当な信頼をおける者でないと任せられないので、厳しい審査がある模様。車で迷って遅刻、なんてことはご法度なのでリヨン市内を熟知していることも必須条件とのこと。

 

今回、アメリカから招待されていたピーター・ボグダノヴィッチ監督。自身の監督作『Saint Jack(原題)』上映前のプレゼンテーションの際、共に来仏した家族と一緒に”ご機嫌に”会場入り。家族も着席し、プレゼンの時を待つのだが… 時間になってもピーターは現れず。分刻みスケジュールの映画祭。皆が不安がるも、15分待っても姿を現さないためやむを得ず上映開始。

 

まあ、こんなハプニングも映画祭ならでは。

 

がしかし気になるのは、あの日あの時、ボグダノヴィッチには一体何が…???

 

 

 

JOUR 4からラストまでは次回のブログでお届けします!

 

画像引用元:

http://www.baz-art.org/archives/2018/10/14/36783990.html

https://france3-regions.francetvinfo.fr/auvergne-rhone-alpes/2012/10/18/festival-lumiere-focus-sur-les-benevoles-122481.html

https://www.radiopluriel.fr/lumiere-2018-cest-parti-jusquau-dimanche-21-octobre/

 

 

 

田中めぐみ

World News担当。在学中は演劇に没頭、その後フランスへ。TOHOシネマズで働くも、客室乗務員に転身。雲の上でも接客中も、頭の中は映画のこと。現在は字幕翻訳家を目指し勉強中。永遠のミューズはイザベル・アジャー二。