2月11日(土)より角川シネマ新宿で公開『ママ、ごはんまだ?』の試写会が
港区虎ノ門にある台湾文化センターにて開催されました。
台湾文化センターって何? という方にご説明をすると、
日台間で経済・文化を促進するあらゆる活動を行う場所であり、
2016年は「台湾映画の新しい潮流を感じよう!」というテーマに基づいて、
台湾ニューシネマ以降の作品を中心に、
青春映画の傑作『藍色夏恋』や『9月に降る風』など、
月に一度、トークショーとセットで上映されていました。

今回の映画『ママ、ごはんまだ?』は、
歌手・一青窈さんの姉であり、
作家・女優の一青妙(タエ)さんの同名エッセイが元になっています。
映画の後援には、彼女が親善大使を務める台南市や、
「一青(ひとと)」という地名が残っている石川県中能登町が参加したので、
結果的に日台合作の作品となりました。

妙さんは幼少期、台湾人である父の顔(ガン)さんと母親の一青かづ枝さんと、台湾で暮らしていました。
劇中は台南の市場で撮影が行われていますが、実際は台北・東門近くの市場へ通っていたそうです。
エッセーによると、近所のペットショップでは、水浴びをする犬達を眺め、
母に連れられた美容院では、暑い夏に洗髪を楽しむおばちゃん達の満足顔を見ていたんだとか。
ところが、やがて妹・窈さんが生まれ、一家は東京へ移り住むことに。
妙さんは今までの台湾式便當から日本式のおかずが仕切られた弁当を携えて、
学校へ通うことになりました。

同名のエッセーは母・かづ枝さんの残した料理ノートを発見したことから始まります。
時に台湾の叔母を訪ね、時に日本の叔母に助言を求めながらノートに書かれたレシピを元に料理を作り、
母の味と、幼い記憶を思い起こす様子がくだけた表現で書かれていて、
読書が苦手な自分でも一気読みできるほど読みやすかったです。

5月には台湾での公開を控えている本作ですが、
日本でも『南極料理人』などで広くそのジャンルが認知されたように、
グルメ映画として見られることになるでしょう。
白羽弥仁監督は学生時代から台湾映画に触れていたようで、
3月にデジタルリマスター上映が決まった『牯嶺街少年殺人事件』や、
侯孝賢監督の作品では『童年往事 時の流れ』『恋恋風塵』などをリアルタイムで見ていたそうです。
最近では、台湾の伝統料理を取り上げた『祝宴! シェフ』がグルメ映画では挙げられますが、
監督は好きな作品でアン・リー『恋人たちの食卓』を挙げました。
三人娘の父で中華料理人役のラン・シャンが作った料理はどれも美味しそうに撮られていましたよね。
他にもガブリエル・アクセル『バベットの晩餐会』などを見ていたようです。

思い出すだけでお腹が空いてくる本作の料理シーンは、
全て辻調グループの中国料理班が作成を手がけています。
同グループは中村義洋監督「みなさん、さようなら」の料理監修や、
TVドラマでは東京・下町の洋食屋を舞台とした「ランチの女王」で、
デミグラソースのかかったオムライスを手がけていました。小学生の頃に学校から帰ってテレビで
「キッチンマカロニ」のおいしそうな洋食を見ては、おばあちゃんに食べ物をせがんでいたのを思い出しました。
今ではファミレスでもデミグラスソースのオムライスはよく見かけますが、
2002年当時はケチャップオムライスが主流だったはずですよね。

小籠包や豚足などは日本でも広く知られていますが、
蘿葡糕(大根もち)、番薯粥(さつまいものおかゆ)、鹹蜆仔(あさり蒸し)、糭(ちまき)、
などなど、台湾へ行ったことがない、一度だけ旅行で行った!という方には本作に登場する料理が珍しいかもしれません。
妙さんのエッセーで紹介されているのは家庭料理が中心だからでしょうか。ツイッターでは試写へ訪れたお客さんたちが、台湾料理屋へ駆け込む現象が起こっていました。心揺さぶるだけでなく胃袋を刺激する本作、予告編はくれぐれも食事後にご覧下さい。

上映後の会場には、
台日系カルチャーマガジン「LIP離譜」の田中佑典さんがいっらしゃいました。
1月23日~2月5日、マーチエキュート神田万世橋で彼らが主催のイベント
「台灣品質 〜日常に台湾クオリティーを〜」が開催中なんですね。
28日(土)には、
「一青妙の台湾地方案内」というトークショーが開催されるそうです。
本作の公開前ですが、ついでに足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

以上、試写会レポートでした!

伊藤ゆうと
イベ ント部門担当。平成5年生まれ。趣味はバスケ、自転車。(残念ながら閉館した)”藤沢オデヲン座”で「恋愛小説家」を見たのを契機に 以後は貪るように映画を観る。脚本と執筆の勉強中。