近年、LGBTをテーマにした映画を見かける機会があるし、その話題が口にされることは多い。
しかし、大抵そこで語られるのは、美しい若者たちだ。

『老ナルキソス』の主人公はSM好きの年老いたゲイだ。普段あんまりスポットライトの当たることのない、SM好きの年老いたゲイの物語である。

「愛の形は様々だ」と言うのは簡単だ。でも実際、どこまでそれを考えているだろうか。
この作品を目にするまでは、SM好きの年老いたゲイの愛の形をわたしは想像したことがなかった。
ただ、普段、なかなかスポットライトが当たらないだけで、彼ら・彼女らの生活は確実に続いている。「変態」と括るだけでは終わらない。人間の愛には優しさ生々しさ寂しさ嬉しさ、何もかもが入り混じって、混沌としている。そういう事をこの作品を観ながらわたしは考えた。

屋上に点滅するネオンの光。そこに残された上裸の老人。スマートフォンの液晶画面の光に透かされる唾。「変態」という2文字の言葉に分類されること。なんだか痛みが画面越しにじんわりと伝わってくる。

<あらすじ>
ゲイでナルシストの老絵本作家・山崎は、老いて醜く衰えゆく自分の姿に耐えられない。山崎はある夜、若く美しい男性レオに出会う。レオとのプレイ中に倒れた山崎は老いの苦しみを打ち明けるが、年若いレオの心には響かない。溺れ死ぬ時を逃し、年老いたナルキソスは、初めて他人と向き合い、恋に落ちていく・・・

『老ナルキソス』

出演 : 田村泰二郎、高橋里央、佐野弘樹、蒲生映与 ほか 
脚本・監督 : 東海林 毅 /プロデューサー : 川勝奈穂 /音楽 : 小島ケイタニーラブ /撮影 : 神田 創/照明 : 丸山和志/録音 : 宋 晋瑞/美術 : 山下修侍/衣装 : 立山 功/ヘア&メイク : 東村忠明

公式サイト:https://old-n.themedia.jp/

<上映情報>
「偏愛ビジュアリスト 東海林 毅 ショートフィルム選
」
本作品含む短編作品4本立て上映。
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=W383bFgBCKk
2019年3月30日(土)〜4月5日(金)
池袋シネマ・ロサにて連日20:50〜レイトショー

<上映作品>
「老ナルキソス」
「ホモソーシャルダンス」「ピンぼけシティライツ」
「23:60」
(連日、ゲストによるトークショーなどのイベントを予定)

渡辺花 /大学で映像について学んでいます。「光の墓」がすきです!