是枝裕和監督・西川美和監督が立ち上げた制作者集団「分福」に所属し、両監督の作品で監督助手を務めてきた広瀬奈々子監督による、オリジナル脚本によるデビュー作、『夜明け』が、1月18日(金)より公開されます。河辺で倒れているところを発見され、人に打ち明けたくはない過去を持つ主人公を柳楽優弥が演じ、彼を見つけ、自宅に住まわせるうちに、疑似親子のような感情を持つようになる木工所経営者を小林薫、そして、YOUNG DAIS、鈴木常吉らが脇を固めるこの作品。1月15日に日本外国特派員協会で行われた会見の様子と共にご紹介します。

出演:柳楽優弥/YOUNG DAIS 鈴木常吉 堀内敬子/小林薫
監督・脚本:広瀬奈々子
(C)2019「夜明け」製作委員会

あらすじ:地方の町で木工所を営む哲郎は、ある日河辺で倒れていた見知らぬ青年を助け、自宅で介抱する。「シンイチ」と名乗った青年に、わずかに動揺する哲郎。偶然にもそれは、哲郎の亡くなった息子と同じ名前だった。シンイチはそのまま哲郎の家に住み着き、彼が経営する木工所で働くようになる。木工所の家庭的な温かさに触れ、寡黙だったシンイチは徐々に心を開きはじめる。シンイチに父親のような感情を抱き始める哲郎。互いに何かを埋め合うように、ふたりは親子のような関係を築いていく。だが、その頃、彼らの周りで、数年前に町で起きた事件にまつわる噂が流れ始める――。

試写後の会見より、Q&Aを一部抜粋してご紹介します。

―音楽(Tara Jane O’Neil)が素晴らしかったが、なぜこのコラボレーションに至ったのか。
地味な田舎の町での、閉鎖的な話になるので、抜け感のある曲を使いたいと思っていた。北欧ポストロックが良いと思っていたが、見つからずにいたところ、音楽に詳しい分福の北原プロデューサーに、渋谷のライブハウスに連れて行かれ、ライブを観た後で、その場で直談判し、決定した。

―タイトル(英題:His Lost Name)についてお伺いしたい。
漠然とした不安の中、夜が明けて欲しい、という願いを込めてタイトルをつけたが、海外向けには漠然としすぎているため、英語のタイトルは『His Lost Name』になった。

―是枝・西川監督というビッグネームを背負っていることに対するプレッシャーは。また、どのように自分のスタイルを打ち出していったのか。
特に是枝監督については、影響を受けているが、それだけではなく、いかに違うことをやるかを心掛けた。具体的には、作り手の思いを台詞にしない、ということや、いかに言葉に頼らずに作るか。カメラを眼差しに返す、カメラを視点として描く、というところなど。

会見で、広瀬監督が口にされていた「漠然とした不安」や「優しい人/いい人に対して感じる居心地の悪さ」というフレーズが印象に残りました。作品中で描かれる人間関係も、本来であればポジティブにとらえられるべき「絆を深めていく」という過程が、観客に不安を感じさせる要素になっているところに、その言葉の意味を見たような気がします。そしてまた同時に、その感覚に非常に現代的なものも感じました。しかし、全体的な印象として、決して後ろ向きではなく、積極的にではないものの、それでも(結果的に)前進していく、その先にある微かな明るさを感じる作品でした。

1月18日(金)、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
公式サイト:https://yoake-movie.com/

佐藤更紗
国際基督教大学卒。映像業界を経て、現在はIT業界勤務。目下の目標は、「映画を観に外へ出る」。