10417616_625022230947553_8890093063731973188_nなぜか今年のカリコレは、ひそかなハーレイ・ジョエル・オスメント君祭りともなっていて(笑)、一本はケヴィン・スミスのバイオロジカル・ホラー『Mr.タスク』ですが、もう一本あり、それは彼が童貞のくせにマセたクソガキ相手の性教育教師を務めることになったコメディ『SEX エド』という映画です。セックスで頭がパンパンな童貞教師エド君の名前と、sex education(性教育)をかけたタイトルですね。

まあ、ハーレイ君は最初数学の先生だったんですが、リストラされてベーグル屋でバイトしてて、そこに元教え子のリア充カップルが来てお前の店のトイレでセックスさせろよとか絡まれるってなかなか身につまされるエピソードもあったりするのですが(笑)、ともあれ童貞のくせに性教育教えるくらいしか就職口のなかった彼が、やがて童貞のくせに性教育の重要性を自ら学び、童貞のくせに美女にアタックしたりクソガキたちとうまくやっていくという、いかにもアメリカ映画っぽい王道のストーリーでした。

すっかり肥え上がり、髪の毛もヤバ目で、程良く仕上がったオタク感の素敵なハーレイ・ジョエル・オスメント君の現在の姿ですが、どこか日本の某思想家に外見が似てるかも?というのはさておき、性格俳優として主に脇役なんかで今後あれこれ需要ありそうな佇まいでした。これは、アメリカ映画界における子役出身者としては王道コースのバリエーションですし、キャリア選択として悪くないのではないかと。

で、実はこの映画の日本語字幕を私が担当させていただきました。いただいたDVDを見て分かったのですが、学術的なものからストリートやインターネットのアレまで、セックス用語やナンパ用語のギュウギュウに詰まった作品で、ああ、だから私が選ばれたのかなあと正直思いました(笑)。嘘です。

sexed_aでも、アレですね。外国語を翻訳するとき、日本語における罵倒語の乏しさは常に問題になりますけど、セックス関連も実に厳しいですね。向こうの小学生くらいの男の子・女の子が得意気に性器や特殊な性癖、性病などをあれこれ実に豪華絢爛な用語の数々に言い換えて大人を恥ずかしがらせて喜ぶのに対して、それらを日本語に置き換えようとすると、殆ど言葉が一つしかない。全然言い換えられない。しかも全く面白くない。まあ、性用語辞典とか調べるとなくはないのですが、ゴールデン街のエロオヤジじゃあるまいし、そんな言葉を子供は面白がって使わない。あるいは、使っても雰囲気に合わないだろってのばかりで、この辺りは大変苦労させられました。

まあ、映画としては、そんな今どき感をほどほどに漂わせつつ、要するに、正しい性知識を持つことは、男性視点から極度に誇張されたポルノやペドフィリア、異常性癖などばかり氾濫するインターネット時代のこの現代社会の中で、結局は子供たちを救うのだというとてもまっとうなメッセージを持つものでした。AVとかばかり見て、あれが普通のセックスだと思い込んでるそこそこいい歳した男性とか、日本にも普通にいますもんね。あと、インターネットを埋め尽くす異常性欲の代名詞として「ぶっかけ」とか「触手」が日本語そのままで語られているのは、まあ、こういう文化の発信拠点が日本だって世界的に認知されてることの現れでもあり、とても興味深かったです。いや、興味深いじゃ済まないですけどね(笑)。

『SEX エド』は5月16日から開催されるカリコレ2015の一本として上映されますので、興味ある方はどうぞ。カリコレの公式サイトはこちらになります。
http://qualite.musashino-k.jp/quali-colle2015/

大寺眞輔
映画批評家、早稲田大学講師、アンスティチュ・フランセ横浜シネクラブ講師、新文芸坐シネマテーク講師、IndieTokyo主催。主著は「現代映画講義」(青土社)「黒沢清の映画術」(新潮社)。

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