「衝撃的すぎる。」
作品を観終わった後、この言葉しかでてこなかった。
監督のサミュエル・フラーの作品はそれぞれ個性的であるが、中でも『裸のキッス』でコンスタンス・タワーズ演じる売春婦ケリーが、男性を何度も殴打する衝撃的なオープニングシークエンスはフラーの手腕が冴え渡っているのが感じられる。
主人公を演じたコンスタンス・タワーズは、最初のシークエンスだけで、主人公の過酷な状況を極めて視覚的なイメージで観客に伝えている。また彼女が暗黒社会を歩みながらも、人間らしい誇りと優しさをあくまでも保ち続けようとする姿はなぜか身近に感じられる。偽善、嫌悪、差別、そして暴力。これらを娯楽に変えたフラーはまさに「奇才」といえるだろう。
奇才サミュエル・フラー監督らしいともいえるのが、ケリーと病院に入院している子供たちが歌を歌うシーンである。あらゆる人種混ざりあい、共存していく場面は、差別に対向しているサミュエル・フラー監督らしい演出だともいえる。監督らしい演出を見つけるのもまた新しい面白さだといえる。
上映時間たった92分の中で観客に数々の衝撃を与え、またモノクロの映像の中に人間の不気味さとサミュエル・フラーの独特な雰囲気が醸し出されている。
『裸のキッス』の衝撃を見逃さないでほしい。
『サミュエル・フラー自伝 わたしはいかに書き、闘い、映画をつくってきたか』刊行記念「サミュエル・フラー連続上映!」
上映作品
予定されているのは、サミュエル・フラーが手掛けた『チャイナ・ゲイト』、『ショック集団』、『裸のキッス』、『ベートーヴェン通りの死んだ鳩<ディレクターズ・カット版>』、『フラーライフ』、『ストリート・オブ・ノーリターン』、『ホワイト・ドッグ』、『最前線物語』の8作品です。
全国で開催予定ですが、各劇場によって上映作品が異なりますのでご注意ください。
劇場情報
(※ 劇場により上映作品が異なります。詳細は各劇場のウェブサイトなどでご確認ください。)
札幌:札幌プラザ2・5地下劇場メッセホール 1/31(日)
東京:ユーロスペース 2/20(土)~3/4(金)
山口:YCAM 3/19(土)~21(月), 3/26(土)
仙台:桜井薬局セントラルホール 4/3(日)~4/15(金)
名古屋:名古屋シネマテーク 4月予定
広島:横川シネマ 4月中旬, 5月予定
京都:同志社大学寒梅館 4/28(木)
京都:京都シネマ 4/30(土)~5/6(金)
大阪:第七藝術劇場 4月下旬予定 神戸:神戸アートビレッジセンター 4月下旬予定
公式URL
http://www.fuller2016.com
船津 遥
World News担当。学習院大学文学部フランス語圏文化学科所属。サイレント映画、ウェス・アンダーソンのとりこ。日活映画にもはまっている20代女子。(量産型キラキラ系女子ではありません。)