偏見という言葉から連想されるイメージは、なんとなくねちっこくて湿っぽい、与えられると不快なものなのに、サミュエルフラーの描く偏見はなぜこんなにも不快ではあるけど嫌味満々でカラッとしているのでしょうか!
舞台は第一次インドシナ戦争時の1954年(仏領インドシナからフランスが撤退した年)。
主人公のアメリカ人ブロックと元仲間で元妻(?)のリーアは、今や傭兵としてインドシナでフランス外人部隊に所属しており、 任務で中国国境にあるベトミンの軍需品集積場を爆破しに行くことになります。 一度は別れたものの、任務が決まり、ひょんな事で再会した2人ですが、実は2人の間には子供がいて、アジア人との混血であるリーアから産まれた子供は完全なアジア人でした。
それが嫌でブロックは2人を捨てていたという過去が!子供を産む前はどんな子でもいいと言っていたくせに… 嘘つきブロック!アジア人の私からしたらそりゃあなんて嫌なやつ!と思うものです。
さらにブロックは、アジア人が俺は嫌いなんだという事を割と何度も映画で言ってくるし、 なんなら何度もあの目が嫌だの無理だと言ってきます。
リーアなんてそんなやつを時々愛おしい目で見て、やっぱり好きよ〜と抱き合い、だけどブロックの偏見発言が出る度に思い出したように腹を立てるみたいな、 何だよ、どうしようもないなこの2人…と思わずにはいられません。
戦いに行く前だというのに人目をはばからずイチャイチャもします。
そして、和解したんだな、といったような目でそれを微笑ましく見る仲間。おいおい!ここは戦場ですよ。
そしていよいよ任務の終盤、呆気なく爆破!早いです。こっちがまだ気持ちを用意していない間に任務は終わります。
映画を観ている時、何となく作品と息を合わせる時があると思うんです。悲しい気持ちの時は作品にもその間があったり、犯人を捕まえる前のハラハラする間があったりする。
しかし、チャイナ・ゲイトにはございません。寄り添う必要は無い、あくまでサミュエルフラーの言い分が詰まり詰まった作品なのです。
それがまた面白くて、じゃあ他の作品ではどんな事を言いたいのだろう?とそそられるわけです。
これはブロックの策略なのか?嫌い嫌いと言いつつ、いつかアジア人の良さに気付く一言でもあるんじゃないか…。
それは映画をみていただければと思います。そこも早いです。
見逃さないよう、心してチャイナ・ゲイトに立ち向かっていただければと思います。
『サミュエル・フラー自伝 わたしはいかに書き、闘い、映画をつくってきたか』刊行記念「サミュエル・フラー連続上映!」
上映作品
予定されているのは、サミュエル・フラーが手掛けた『チャイナ・ゲイト』、『ショック集団』、『裸のキッス』、『ベートーヴェン通りの死んだ鳩<ディレクターズ・カット版>』、『フラーライフ』、『ストリート・オブ・ノーリターン』、『ホワイト・ドッグ』、『最前線物語』の8作品です。
全国で開催予定ですが、各劇場によって上映作品が異なりますのでご注意ください。
劇場情報
(※ 劇場により上映作品が異なります。詳細は各劇場のウェブサイトなどでご確認ください。)
札幌:札幌プラザ2・5地下劇場メッセホール 1/31(日)
東京:ユーロスペース 2/20(土)~3/4(金)
山口:YCAM 3/19(土)~21(月), 3/26(土)
仙台:桜井薬局セントラルホール 4/3(日)~4/15(金)
名古屋:名古屋シネマテーク 4月予定
広島:横川シネマ 4月中旬, 5月予定
京都:同志社大学寒梅館 4/28(木)
京都:京都シネマ 4/30(土)~5/6(金)
大阪:第七藝術劇場 4月下旬予定 神戸:神戸アートビレッジセンター 4月下旬予定
公式URL
http://www.fuller2016.com
住本尚子 イベント部門担当。 広島出身、多摩美術大学版画科卒業、映画館スタッフとして勤務、映画と美術の懐の深さで生きています。映像製作初心者で、もがきながらも産み出す予定!