こんにちは。フランス・リヨンの田中めぐみです。
先日、毎年10月に行われるリヨン・リュミエール映画祭のメインプログラムが発表されました。具体的な日時やゲストなどの詳細は映画祭直前の9月なので、今回はひとまず大まかな概要です。そして私は、それに伴うプレゼンテーションに参加して参りました!
今回はまず“リュミエール映画祭とは”をざっと紹介します。
プレゼンテーションの内容は次回ブログで紹介します。
■リヨンの市民密着型映画祭
今年で10年目を迎えるリュミエール映画祭。リヨンの街をあげた毎年恒例行事としてすっかりお馴染みになっているようで、住民の期待と関心は予想以上に相当なものです。ボランティアも去年は700人を超え、60もの公共施設が映画祭の会場となりました。
“リヨン”・リュミエール映画祭とは言えど、実際にはリヨンを含む周辺24のコミューンが開催地となり、街中の(ほぼすべてのと言っても過言ではない)映画館、劇場、コンサートホールなどが会場となるかなり規模の大きな映画祭です。中でも、毎年クロージングセレモニーが行われている収容人数17,000人というコンサートホール「トニー・ガルニエ」は、映画祭を締めくくるに最適の圧巻の大ホールです。
また、レストランやカフェ、アトリエ、公園、川沿いなど街の至る所で様々な企画が開催されます。このように映画を愛する市民や公共施設、多くの企業パートナーが一丸となって皆で作り上げているのが当映画祭なのです。
また、フランスだけでなく、世界から多くの映画ファンが集まります。これだけの会場を使ってこれだけの上映数を誇る映画祭、どれだけ混んでいてもどこかしらの上映にはありつけるはずです。ホテル、レストランは書き入れ時でしょうね。さらには、エールフランスともパートナー契約をしていて航空券の割引もきくとか!
■ボランティアさん小話
先日「ボランティア説明会」にも参加してみたのですが、ボランティアの大半が数年間継続して参加している“ベテラン”さん。さらに驚くことは、日本では映画祭ボランティアと言えばどうしても「若者」という印象が強いですが、ここは違う。仕事をリタイアされた中年以上のいわゆる「大人」の方たちが中心なのです!皆さん本当にお元気で、映画祭というイベントへの意気込みや映画スターへのミーハー精神は並大抵のものではありませんでした。
彼らの映画への情熱を見ていると、残念ながら今現在あまり感じられなくなった、テレビがなかった頃の誰もが映画にくぎ付けになった時代、映画が最も輝いていた古き良き時代の気配を感じざるを得ません。
■コンペのない映画祭
映画祭ディレィターを務めるのはティエリー・フレモー。彼はアンスティチュ・リュミエール(リュミエール研究所)のディレィターであり、カンヌ国際映画祭の総代表としても有名ですよね。彼曰く、カンヌ映画祭やその他の映画祭とは異なり、コンペティションをあえて設けない映画祭にしたかったとのこと。それに加えてカンヌ映画祭の10分の一程度のジャーナリスト。全体的に非常にリラックスした環境で、映画関係者自身も観客と共に映画を楽しめる非常にオープンな映画祭となっています。
(技術者、批評家、プロデューサーなど影の貢献者に与える賞4つのみ存在する)
「俺の目の前にタランティーノがいたんだ!かなり興奮気味に映画について語ってたんだ!止まらなかった!」と教えてくれた私のシネフィル友達自身も興奮ぎみ話してくれました。いずれにせよ、観客と映画人、境なく皆が純粋に映画を楽しめる映画祭であることは間違いなさそうです。
■リュミエール賞とは
リュミエール賞はティエリー・フレモーと映画祭プレシデントのベルトラン・タベルニエによって作られた、リュミエール兄弟によってシネマトグラフが開発され、1895年に最初の映画『工場の出口』が撮影されたまさにこの場所・リヨンにて、第七芸術における重要人物に贈られる賞です。(公式HPより引用)
今を生きる芸術家に感謝の意を伝えることが目的の当映画祭唯一の賞のようです。これまで以下のシネアストが選ばれ、彼らの映画界におけるこれまでの功績が称えられました。世界各国からの受賞者はズラリと目がくらむほどの大物ばかり!皆さん、実際にリヨンに訪れ、映画祭を楽しんだ模様。受賞式のスピーチもそれぞれ感動的でした。
クリント・イーストウッド(2009)
ミロス・フォアマン(2010)
ジェラール・ドパルデュー(2011)
ケン・ローチ(2012)
クエンティン・タランティーノ(2013)
ペドロ・アルモドバル(2014)
マーティン・スコセッシ(2015)
カトリーヌ・ドヌーヴ(2016)
ウォン・カーウァイ(2017)
受賞者はアンスティチュ・リュミエールの外壁、「最初の映画」通り沿いの壁に並ぶ金のプレートに名前が刻まれます。
リュミエール賞、今年は誰の手に…
■豪華なゲストたち
リュミエール賞受賞者に加え、毎年映画界の有名人がここリヨンを訪れます。ティルダ・スウィントン、マイケル・マン、ディアーヌ・キュリス、アンナ・カリーナ、ウィリアム・フリードキン、ギレルモ・デル・トロ、ニコラス・ウィンディング・レフン、パク・チャヌク、ギャスパー・ノエ、ソフィア・ローレン、マッツ・ミケルセン、キアヌ・リーブス、ジャン=ポール・ベルモンド、イザベル・アジャーニ、サルマ・ハエック、フェイ・ダナウェイ、エマニュエル・ドゥヴォス等々。もうここに挙げていたらキリがありません。彼等はマスタークラスのゲストとして、プレゼンターとして、ラジオのゲストとして、または特別上映のホストとして参加しています。
■世代、国籍を超えた選りすぐりの傑作映画の数々
当映画祭の目玉と言えば、ずばり圧倒的な映画数の上映プログラム。厳選されたシネアストたちのレトロスペクティブだけでなく、サイレント映画やドキュメンタリー、アニメーション、短編映画、子供のためのディズニー映画など多彩なジャンルの上映があります。招待ゲストの出演作の上映や映画音楽に焦点を当てたイベント、あるテーマに沿った講演会、インタビュー、シネ・コンサートなどもあります。
例えば昨年はアンリ=ジョルジュ・クルーゾーやウォン・カーウァイのレトロスペクティブや名作西部劇特集、レオンティーネ・ザーガンやバーバラ・ローデンなどをフィーチャーした女性監督作品などがメインどころでした。メジャーなものからマイナーなものまで、上映作品は多岐にわたります。公式プログラムを見ているだけで眩暈がするほど、濃密で充実したラインナップです。
「光の当たっていない名作、またはシネアストに光を当てるのも私たちの使命です」というようなことをプレゼンテーションで進行の方が語っていました。リュミエール(光)映画祭、まさにそんな場所です。
これにて、リュミエール映画祭のざっくり紹介は以上です。
次回は今年の映画祭のメイン・プログラムをお伝えします。
画像引用元:
http://www.festival-lumiere.org/
https://www.makexfrance.com/chroniques/reveillez-cinephile-festival-lumiere/
http://lemag.weekendesk.fr/article/organiser-un-week-end-a-lyon-pour-le-festival-lumiere_a2972/1
https://en.lyon-france.com/What-s-on/Festivals/Festival-Lumiere-10-Grand-Lyon-Film-Festival
http://www.purepeople.com/media/camelia-jordana-ludivine-sagnier-julie_m2733630
田中めぐみ
World News担当。在学中は演劇に没頭、その後フランスへ。TOHOシネマズで働くも、客室乗務員に転身。雲の上でも接客中も、頭の中は映画のこと。現在は字幕翻訳家を目指し勉強中。永遠のミューズはイザベル・アジャー二。